
只,私は「ホスピタリティ」と「おもてなし」の言葉上の優劣を言いたいのではありません。
一番の問題は、どちらの言葉も日本ではきちんと定義されずに、論じられていることだと思います。
私は研修やセミナーの度、受講者に対して「ホスピタリティの定義とは何ですか?」「おもてなしとは何ですか?」と必ず訊きます。
しかし、ほとんどの方が残念ながら曖昧にしか答えられません。
きちんと言語化できないのに、どうして具体的な行動をすることができるでしょう?
石川県和倉温泉の老舗 加賀屋さんでは、おもてなしを「お客様が求めていることを、求められる前に提供すること」と定義しているそうです。(まさに本来のホスピタリティの定義です)
その為に作業レベルで様々な工夫を行い、その分客との対話になるべく沢山の時間を費やすのです。
組織としておもてなしを明確に定義しているからこそ、長い間おもてなしNo1の宿として評価されているのではないのでしょうか?
もう一つ例をあげると、数年前に国の観光ビジョン構想会議メンバーでもあるデービッドアトキンソンさんが「おもてなしはコンテンツではない」と発言しています。(そして日本の観光振興ビジョンから「おもてなし」という言葉が消えました)
しかし、アトキンソンさんが主張している、日本のおもてなしの問題点とあるべき姿とは…
・見返りを求めない無償の行為である
→対価を貰えるだけの高品質なものにするべき
・外国人はこうだろうと思い込み、自分に都合良く解釈したマニュアル行為を押し付けている
→相手が何を求めているか耳を傾け、考えて柔軟に対応すべき
この2点です。
これもやはり、本来の「ホスピタリティ」という定義での必要性を訴えているのです。
そりゃそうです。
「おもてなし」は英語で「ホスピタリティ」と訳されているのですから…。
以上から、私の提案2点です。
一点目は、もし「おもてなし」や「ホスピタリティ」を向上させようと考えているなら、まず自組織において言葉の定義付けから行って欲しいのです。
二点目、茶の湯等にも通じる日本古来の「おもてなし」とは、「あなたをおもてなしします」とお客様へ言った途端に「おもてなし」ではなくなります。(これも「ホスピタリティ」と同じ定義です)
だから、「我々はお客様をおもてなしします」、「ホスピタリティ活動を行っています」等と顧客に訴求しない方が良いのです。
「あなたをおもてなしします」と宣言すると、その時点から誰にでも平等に提供されるもの=「サービス」に変化します。
(なので今多く行われている、インバウンド対応のWi-Fiや多言語化したインフォメーションの充実なんかは、「おもてなし」では無く「サービス」のインフラ整備なのです)
親しい人が自宅に遊びへ来るとき、皆さんは「あなたをおもてなししますね」「ご馳走出しますね」と決して言わない筈です。
「あなたをおもてなしします」と言わた途端、押しつけ感を受けます。
上から目線にも感じます。
これが「おもてなし」をします、と言われた時に感じる違和感の原因です。
だいたい「笑顔で接客します」と書いてある店に限って笑顔がありません。
この2点を理解して、活動することから本当の意味での「おもてなし」を向上させることになるのです。
*1月は東京〜小田原〜箱根を、一人で廻ってきました。
写真は箱根湯元の有名なお蕎麦屋「はつ花」さんの自然薯蕎麦です。
15年ぶりに食べましたが、相変わらずの美味しさです。
これからブログで少しづつUPしていきます。
*詳細は拙著「おもてなしを売上に変える技術」に詳しく書かれています。
是非お読みください!!