
発端は、あるスーパーの掲示板に貼られた「お客様の声」。
「車の出入り口のガードマンさんが、通る一人一人にお帰りなさいとか、ご苦労様とか、お気をつけとか、その時々、その人それぞれで多少の違いはありますが、声を掛けていますが、非常に耳障りですのでやめてください」(原文のママ)
それに対して店側の対応は、駐車場のスタッフが所属している警備会社に、注意するように連絡したという回答でした。
その店からの回答を見た他のお客様から、「挨拶は素晴らしいことなので、一人だけの客の声に対応せず、そのまま挨拶を続けてください」という声が掲示板に一斉に貼られたという話題でした。
その話を聞いて私は、
「そのスーパーはどんなビジョンやミッションを掲げていたのだろう?」
「店長はそれに基いて、どんな具体的な行動指針をスタッフに示していたのだろう?」
と疑問に思いました。
例えば
「お客様に親切なお店でありたい」が方針で
だから「フレンドリーな接客をしていきましょう」とスタッフへ指導していた
のであれば、「挨拶が耳障り」というお客様の声に対応すべきでは無いのです。
対応してしまうと、スタッフも混乱します。
現場は疲弊し、モチベーションも、当然従業員満足も下がります。
悪影響しかありません。
全てのお客様に満足を与えるのは不可能です。
どんな大企業でもです。
求める事前期待が人それぞれで違うからです。
人だけでなく、商品やサービスでも違う筈です。
例えば私も、旅館ではホスピタリティ溢れる対応を好みますが、洋服を買う時に声を掛けられるのは苦手です。
提供する側も同じです。
自分たちの組織が、何を目指しているのか、どんな価値を「誰に」提供するのかを決めるのです
だからお客様を「選ぶ」ことが大事なのです。
このことはマーケティングの一部なので、どの企業も明確にしているはずなのです。
しかし、実際の現場は厳しい環境の中、日々大変な思いをして売上を上げるために活動しています。
すると、どうしても全てのお客様に満足を与えようと、媚を売ってしまいがちになるのです。
勘違いしないで欲しいのは、違うお客様が来店されたからと言って、ぞんざいに扱うという意味ではありません。
選んだお客様に対して徹底的に満足度向上を図りましょうということです。
選んだお客様の声も徹底的に取り入れていきましょうということです。
「カスハラ」という言葉を知っていますか?
カスタマーハラスメント の略です。
先日、UAゼンセンで5万人を調査したら 70%以上が経験しているという驚き(でもないか)の結果となりました。
一番多かったのが、暴言で2万4千人が体験しているそうです。
そして驚くべきは、回答した1%に当る、359人に精神疾患を発症したことが分かりました。
このままでは、接客業の人材不足に更に拍車を掛けることになってしまいます。
報道では、他のスタッフからも視認できる位置で接客する、従業員の声を聞く窓口を設置するなどの対症療法が紹介されていました。
しかし、カスハラを根本的に減らすためのポイントも、やはり全ての顧客に満足を与えようと考えないことだと思います。
お客様を「選ぶ」という行為は、ホスピタリティ向上の大変重要なベースにもなるのです!
*写真は、円山動物園に新しくできた「ホッキョクグマ館」。水中で躍動する姿が見られます!