セブン&アイ会長退任劇とホスピタリティ

セブン&アイ鈴木会長の突然の辞任劇は、大変衝撃を受けました。私は系列の百貨店で20年以上働いていたこともあり、鈴木会長を尊敬もしていました。ですから、このような終わり方は残念な気持ちで一杯です。

鈴木さんが日本の小売業を変えた、稀代の天才経営者であることには間違いがないでしょう。

ご存知のように、社内の大反対を押し切り、アメリカからセブン-イレブンを日本に導入します。「商売はドメスティックなもの」と、おにぎりやおでんを売出し、銀行ATMの導入や最近は淹れたてコーヒーなど、どんどん我々のライフスタイルを変えてきました。まさに小売業のイノベーターです。

 

その中でも大きい変革が、「単品管理」という手法の確立と言えるでしょう。

簡単に説明すると、絶対単品の販売データと外部・内部環境の情報から、担当者自身が販売動向の仮説を立てて、発注数決定や売り場を変更する手法です。

これにより、従来の経験と勘と慣習が全てだった小売業に、データとロジカルな思考によるPDCAを可能にしました。また、従業員のモチベーションをあげ、併せて人材育成をも可能にする全く新しい手法です。

 

しかし、以前より私がお伝えしています「サービスとホスピタリティ」の概念の違いを考えた時、鈴木さんの限界が見えてきます。

以前コチラのブログでもお伝えしましたが、「サービス」とは、機能的満足を充足させる概念です。低コストでスピーディーに、誰にでも均等に最低限のレベルの満足を与える概念です。

単品管理を行うことで、品切れや機会販売ロスを無くし、高効率を追求できます。「サービス」には最適な手法です。

 

しかし、「ホスピタリティ」は情緒的満足の概念です。目の前にいる人が何を求めているのか、個々のお客様毎に読み取り、言われる前に提供する概念です。

 

コンビニで、情緒的満足を充足させる仕組はありません。

 

単品管理では、売れていない商品を「死に筋」と判断して、売り場から取り除きます。

4週売上0だとDアイテム(死に筋アイテム)として、ピックアップされ、排除する仕組みなのです。例えばどれだけ、その店の常連客が、2ヶ月に一回定期的に欲しがっていようが関係ありません。

そこにコンビニの限界があります。

 

翻って、人が介在しないネット通販。

Amazonなどで、気になる商品を見ると、その閲覧傾向から、欲しそうな商品がアチコチで掲示されるようになった経験がありませんか?閲覧していた商品が値下げされると、メールが配信されたりします。

ネット通販のほうが、実は先に「個客」対応が出来るようになってしまっているのです。

 

そして、セブン&アイの問題は、セブン-イレブンの手法を他のグループ会社、全業態にも強要したことにあります。

 

現に、私が働いていた百貨店でも単品管理が、一番大事な仕事でした。しかし、百貨店は明らかにコンビニと違う顧客のターゲットです。来店頻度も違います。ということは商品回転率も違います。当然、求められている品揃えやサービスも違います。品揃えで有れば、例え4週売れなくても、高額商品=見せ筋の展示が必要です。

顧客視点不在の、ホスピタリティ無き、百貨店は百貨店ではありません。

鈴木さんは、変化対応と言いながら、業態の違いによる変化対応を施策として明確にしなかったこと(少なくても私が在籍時は)。これが現在のイトーヨーカドー始め、グループ各社の不振から脱却できない最大の理由だと私は思っています。

円山にあるインド料理のお店ジャドプールです。北と南インド、両方の味が楽しめます。

写真は南インドスタイルの「ミールス」です。

写真を見ていると、また食べたくなりました。