本当に観光客を呼んで大丈夫ですか?〜北海道新幹線開業に寄せて

いよいよ3月26日、念願の北海道新幹線が開業しました。

それを記念して(?)最近強く感じていることをお伝えしたいと思います。

 

最近私は、北海道観光振興機構によるホスピタリティ向上事業のお手伝いで、幾つか道内の有名観光地を覆面調査しました。

 

その際、ある世界的にも有名な観光地に行った時のことです。

 

調査日が生憎の荒天で、屋外の体験型観光は全て休止の状況。

しかし、翌日の天気予報が回復傾向だったので、観光案内所へ行き、翌日のアクティビティが何か楽しめるかどうかをスタッフに尋ねました。

すると、スタッフからは間髪入れず「無理ですね」の一言。

何か調べるでも、他の手段を勧めるでも無く、たった一言で終わりでした。

 

その観光地は、札幌から車で何時間も掛かる場所です。

観光客の皆さんは、全員期待にワクワクしながら、楽しみに来てるわけです。

晴天で、全ての体験型観光を楽しめるお客様は、一体何%くらいなのでしょうか?

悪天候に来た観光客の方が、全員ガッカリして帰るのでは、その地域のファン(=リピーター)になる訳がありません。

 

近くの博物館では、同じような状況に同じ問い合わせをした時、「明日の朝、この観光協会のHPを見て下さい。するとツイッターのリンクがあります。そこから発信されている情報が一番早くて正確です」と答えていました。それだけでも納得感が違います。

また、ホテルの客室案内のスタッフは「お客様、我々住んでいる者でも、これ程の荒波は見たことがございません。是非この迫力をお楽しみください」と伝えてくれました。

そうすると、こちらもポジティブに捉えることが出来ました。

本当はそんな悪い状況の時こそ、プロの腕の見せ所のはずなのです。

 

また、違う有名(こちらも世界的に)観光地での調査では、こんなことがありました。

 

日曜の午前11時に観光案内所を訪問したのです。

チェックアウト直後の時間帯なので、ひっきりなしにお客様がやってきます。

しかし、案内所のカウンターにスタッフの姿は全くありません。

見ると、ガラス越しに有る奥の事務室に、4人ほどスタッフは居るのです。

所が、お客様の方を観ることなく、全員パソコンで作業に熱中しています。

観光客の皆さんは、奥まで声を掛けられず、諦めて帰っていきます。

20分程居ましたが、カウンターにスタッフが出てくることはありませんでした。

 

地域観光の情報発信の核となるべきである、観光案内所がこの状況では、北海道観光の前途は明るいとは言えません。

 

今、各地域では、地方創生の大きな柱である観光客を増やしましょう、地域をブランド化しましょう、という動きが大変盛んです。

競うように、新たな地域資源を作り、おしゃれなパンフレットや、カッコイイ動画を作って、イメージ戦略に精を出しています。

きっと北海道新幹線開業の効果で、一時的に潤う地域も出てくることでしょう。

 

しかし、実際にその街に来て貰った時、事前のイメージとのギャップが大きければ、そのお客様は二度とその地域に来ることは無いでしょう。

お金を掛けてお客様を呼べば呼ぶほど、ガッカリの回数が増えて、それが口コミで拡散され、あっという間にその地域の悪い評判は全国に広がります。そうなったら、その地域は、お終いです。「北海道の地方の観光はやっぱりダメだ」なんてことになります。

 

それを防ぐ為には、観光客を呼ぶ前に「この地域にお客様が来て貰って、本当に大丈夫なのか?」自問自答することです。

 

地域の人の評価だけではダメです。正直、過大評価してしまいます。

地方に行くと、地元の人には愛想良く振る舞って、観光客には「いらっしゃいませ」も言えない、気まずい雰囲気になる施設や店が如何に多いことか!

やはり、外部の人に顧客視点で、調査して貰うことです。(オープンなモニターツアーでは、正確な所が分かりません)

そして、出された課題や改善点を、地域全体で話し合い、素直に修正することです。

例えばホスピタリティ先進地の視察を行ったり、研修機会を増やしたり、外部評価の仕組み化をしたり、手段は幾らでも有る筈です。

新たな地域資源づくりやプロモーションにお金を掛ける前に、そこに予算を付けませんか?

 

そして、「我が街も、これで大丈夫!」と云う確信が出来てから、自信を持って観光客を呼ぶべきなのです。

そうすることで、北海道新幹線開業の効果が最大化されるはずです。

 

写真は苫小牧市の有名店「マルトマ食堂」のマルトマ丼です。

美味しい北海道を体験しに、是非お越しください。