ご当地PR動画が花盛りだそうです。
その中でも今話題なのが、大分県の温泉浴槽でシンクロを踊る「シンフロ」というPR動画です。既に70万回近く再生されています。(10月18日現在)
しかし、私はこの動画を見て、とてもとても違和感を感じました。
誰に何をPRしたいのか?!これで大分県の温泉の良さが伝わり、観光客が増えるのか?!
目的が全く理解出来ません。
まさか温泉で練習するとシンクロが上手くなるとか、プールで練習するより肌が綺麗になるというのをPRしたい訳では無いと思います。
由布院温泉の高級旅館では、こんな賑やかなアトラクションがあって楽しいですよ!とでも言いたいのでしょうか?
大体現在でも、全国の温泉施設では入浴マナーが原因で、毎日のようにトラブルが発生し、現場は大変な思いをしているのを知らないのでしょうか?(外国人だけでは無く、日本人もです)
温泉は古事記の時代から描かれ、日本人のDNAに刻み込まれてきました。
これは元々日本人にあった、神道の「禊」(水浴で心と体を清浄にする)という考えに併せて、8世紀に伝わった「温室経(うんじつぎょう)」というお経が影響していると言われています。
これは簡単に言うと、「風呂に入ると功徳が得られる」というお経です。欧米のシャワーによる“洗い流す文化”ではなく、心の汚れまでを洗い清め、病を治す、日本の“浸(つ)かる文化”=温泉文化が醸成されていったのです。
だから日本人にとって、温泉は神聖な場所なんです。温泉は、湯神・温泉神として古来より崇敬の対象となってきたのです。現在でも全国の温泉地へ行くと、神社が祀られていることが多いのはその為です。
そんな神聖な場所でシンクロを踊りまくることが、ご当地PRになるとは到底思えないのです。
マーケティングとして、ご当地PR動画では(この場合、大分県の温泉が)顧客に提供したいと考えている、本質的な価値を表現すべきなのです。
目立つために、再生回数を増やすためを目的に、手段を選ばずなにをやっても良いと言うのは、明らかに地域活性化とはかけ離れた行為です。
目的と手段を混同しています。
(そう言えば大分県は「おんせん県」を商標登録しようとして特許庁から拒絶されてましたね、当たり前です)
この動画を褒め称えるメディアの感覚も理解出来ません。
そして、残念ながらこの目的と手段を勘違いしている地方創生の取り組みが、全国あちこちで散見されます。
地方創生の名の元では何でもOKの感覚、これでは大平首相時代のふるさと創生事業と何ら変わらない結果に終わることでしょう。
因みに、この大分県の動画事業、製作・事業費は全部で約4500万円かかったそうです。

北海道三大秘湖オンネトーそばに湧く野中温泉に入浴してきました。
純度100%、源泉から手付かずに直接送り込まれるお湯は、素晴らしく強力な硫黄泉です。
入浴する者は静かにそのお湯の凄さを堪能します。
ここで泳ごうと思う客は皆無の筈です(笑)